介護の仕事は特に資格を持っていなくても従事出来るものの、デリケートな高齢者のケアを行うには身体介護のスキルはあってなんぼです。
福祉施設に就職して仕事をしながら介護スキルを身に付けようとなると、結局足手まといとなって周りの職員と上手くいかなくなってすぐに退職する羽目になることにも…
スキルを確実に身に付けるには、介護の基本を学ぶことが必須となります。
学科については通信で十分に学べるものの、実技は実際に身体を動かしてみないと体得できないもの。
せっかくのことなら、介護に関わる資格を取得してみましょう。
最終的に介護福祉士の資格を取得出来れば、収入アップにも繋がります。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)はホームヘルパーのスタートラインとなる資格で必要最低限の資格です。
また、ホームヘルパーの受験資格を得るには130時間の講習を受けることが条件となっています。
ホームヘルパーの講習内容は下記の通りです。全てのカリキュラム終了後に筆記試験となります。
科目 | 時間数 |
---|---|
職務の理解 |
6時間
|
介護における尊厳の保持・自立支援 |
9時間
|
介護の基本 |
6時間
|
福祉サービスと医療の連携 |
9時間
|
介護におけるコミュニケーション技術 |
6時間
|
老化の理解 |
6時間
|
認知症の理解 |
6時間
|
障害の理解 |
3時間
|
こころとからだのしくみと生活支援技術Ⅰ 基本知識の学習 |
12時間
|
こころとからだのしくみと生活支援技術Ⅱ 生活支援技術の学習 |
53時間
|
こころとからだのしくみと生活支援技術Ⅲ 生活支援技術の学習 |
10時間
|
振り返り |
4時間
|
合計 | 130時間 |
喀痰吸引研修
喀痰吸引等研修とは、下記の医療行為を行なえる介護職員等を養成する研修です。
- 口腔内や鼻腔内、気管カニューレ内部の「痰の吸引」
- 胃ろうや腸ろう、経鼻経管栄養などの「経管栄養」
医療行為は基本的に介護職員が行うことは認められていません。
しかし、2012年4月の「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正により、一定条件を満たすことにより、介護職員でも「痰の吸引」と「経管栄養」を実施可能になったのです
介護職員がたん吸引などを実施するための条件
- 喀痰吸引等研修を受けた介護職員であること
- 研修後「認定特定行為業務従事者」の認定証を交付されていること
- 医療行為を実施する施設・事業所が「登録喀痰吸引等事業者」の登録を受けていること
喀痰吸引研修によって介護職員が実施出来る医療行為は下記の5つです。
- 口腔内の痰吸引
- 鼻腔内の痰吸引
- 気管カミューレ内部の痰吸引
- 胃瘻又は腸瘻の経管栄養
- 経鼻経管の経管栄養
研修内容について
喀痰吸引研修には第1号研修から第3号研修までの3つの種類があります。
対象者、医療行為の内容、研修内容は次のとおりとなります。
第1号研修
第1号研修は、不特定多数の人に対して「痰吸引」と「経管栄養」が実施出来るようになる研修です。
主に介護保険施設や障害者施設で働く介護職員等を受講対象としています。
「喀痰吸引研修後に出来る5つの医療行為」の全てが行えるようになります。
第2号研修
第2号研修は第1号研修と同じく、不特定多数の人に対して「痰吸引」と「経管栄養」が実施出来るようになる研修であり、主に介護保険施設や障害者施設で働く介護職員等を受講対象としています。
「喀痰吸引研修後に出来る5つの医療行為」のうち1つから4つまでの行為を選んで実施研修を行います。
第1号・第2号研修の基本・実施研修内容
《講義》
科目 | 時間数 |
---|---|
人間と社会 |
1.5時間
|
保健医療とチーム医療 |
2時間
|
安全な療養生活 |
4時間
|
清潔保持と感染予防 |
2.5時間
|
健康状態の把握 |
3時間
|
高齢者及び障害児・者の喀痰吸引概論 |
11時間
|
高齢者及び障害児・者の喀痰吸引実施手順解説 |
8時間
|
高齢者及び障害児・者の経管栄養概論 |
10時間
|
高齢者及び障害児・者の経管栄養実施手順開設 |
8時間
|
合計 | 50時間 |
《演習》
科目 | 時間数 |
---|---|
口腔内の喀痰吸引 |
5回以上
|
鼻腔内の喀痰吸引 |
5回以上
|
気管カミューレ内部の喀痰吸引 |
5回以上
|
胃瘻又は腸瘻による経管栄養 |
5回以上
|
経鼻経管栄養 |
5回以上
|
緊急蘇生法 |
1回以上
|
《実施研修》
科目 | 時間数 |
---|---|
口腔内の喀痰吸引 |
10回以上
|
鼻腔内の喀痰吸引 |
20回以上
|
気管カミューレ内部の喀痰吸引 |
20回以上
|
胃瘻又は腸瘻による経管栄養 |
20回以上
|
経鼻経管栄養 |
20回以上
|
第3号研修
第3号研修は以下の疾病・障害を持っている人に対して必要な医療行為を実施出来るようになる研修です。
主にホームヘルパーや特別支援学校の教員等を受講対象者としています。
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)又はこれに類似する神経・筋疾患
- 筋ジストロフィー
- 高位頸椎損傷
- 遅延性意識障害
- 重症の心身障害を患っている療養患者・障害者
研修の流れは第1・2号研修と同じですが、第3研修では基本研修の時間と実施研修の内容が異なります。
第3号研修では講義を受けた後に筆記試験を行い、合格後にシミュレーター演習に入ります。
シミュレーターを使用して、一人で痰吸引が出来ると判断されるまで、規定の回数以上の痰吸引を繰り返して行います。
第3号研修の基本・実施研修内容
《講義・演習》
科目 | 時間数 |
---|---|
重度障害児・者の地域生活等に関する講義 |
2時間
|
喀痰吸引を必要とする重度障害児・者等の障害及びに支援に関する講義 緊急時の対応及び危険防止に関する講義 |
6時間
|
喀痰吸引等に関する演習 |
1時間
|
合計 | 9時間 |
《実施研修》
以下の行為を医師等の評価において、受講者が習得すべく知識・技能を習得したと認められるまで実施します。
- 口腔内の喀痰吸引
- 鼻腔内の喀痰吸引
- 気管カミューレ内部の喀痰吸引
- 胃瘻又は腸瘻による経管栄養
- 経鼻経管栄養
実務者研修
正式名称は「介護福祉士実務者研修」といいます。
質の高い介護サービスを安定的に提供していくことを目標に、基本的な介護提供能力の修得を目的とした資格となり、かつての「ホームヘルパー1級」の後継資格として位置づけられています。
平成25年度より介護職員基礎研修及びホームヘルパー1級は「実務者研修」へ一本化され、新しいキャリアパスでは平成28年度(平成29年1月)の介護福祉士国家試験から、受験資格として実務経験3年に加えて、実務者研修の修了が義務づけられています。
2019年4月より、訪問介護事業所で配置が必須の「サービス提供責任者」になるためには、実務者研修の修了か介護福祉士の資格が必要となりました。
原則として医師や看護師以外には認められていなかった痰吸引や経管栄養の基礎知識を学ぶことができます。
資格を取得出来るまで
実務者研修は450時間の講習を受ける必要があります。取得資格によっては免除される科目もあります。
科目 | 無資格者 | 初任者 | 基礎研修 | HH1級 | HH2級 |
---|---|---|---|---|---|
人間の尊重と自立 |
5時間
|
-
|
-
|
-
|
-
|
社会の理解Ⅰ |
5時間
|
-
|
-
|
-
|
-
|
社会の理解Ⅱ |
30時間
|
30時間
|
-
|
-
|
30時間
|
介護の基本Ⅰ |
10時間
|
-
|
-
|
-
|
-
|
介護の基本Ⅱ |
20時間
|
20時間
|
-
|
-
|
-
|
コミュニケーション技術 |
20時間
|
20時間
|
-
|
-
|
20時間
|
生活支援技術Ⅰ |
20時間
|
-
|
-
|
-
|
-
|
生活支援技術Ⅱ |
30時間
|
-
|
-
|
-
|
-
|
介護過程Ⅰ |
20時間
|
-
|
-
|
-
|
-
|
介護過程Ⅱ |
25時間
|
25時間
|
-
|
-
|
25時間
|
介護過程Ⅲ |
45時間
|
45時間
|
45時間
|
45時間
|
45時間
|
発達と老化の理解Ⅰ |
10時間
|
10時間
|
-
|
-
|
10時間
|
発達と老化の理解Ⅱ |
20時間
|
20時間
|
-
|
-
|
20時間
|
認知症の理解Ⅰ |
10時間
|
-
|
-
|
-
|
10時間
|
認知症の理解Ⅱ |
20時間
|
20時間
|
-
|
-
|
20時間
|
障害の理解Ⅰ |
10時間
|
-
|
-
|
-
|
10時間
|
障害の理解Ⅱ |
20時間
|
20時間
|
-
|
-
|
20時間
|
こころとからだの仕組みⅠ |
20時間
|
-
|
-
|
-
|
-
|
こころとからだの仕組みⅡ |
60時間
|
60時間
|
-
|
-
|
60時間
|
医療的ケア |
50時間
|
50時間
|
50時間
|
50時間
|
50時間
|
医療的ケア・演習 |
12時間
|
12時間
|
12時間
|
12時間
|
12時間
|
合計 | 450時間 | 320時間 | 50時間 | 95時間 | 320時間 |
ホームヘルパーの仕事について
ホームヘルパーは、介護保険法では訪問介護員と呼ばれています。
介護サービスを必要としている方の自宅を訪問し、日常生活における手助けをするお仕事です。
食事・排せつのなどの身体介護や、掃除・洗濯・炊事などの生活援助を主として行います。
ホームヘルパーの仕事
訪問介護サービスを提供することがホームヘルパーの仕事ですが、その仕事内容は以下のように「身体介護」と「生活援助」の2つに大きく分けられます。
身体介護
身体介護は、利用者様の身体に直接触れて行う介助の総称で、以下のようなサービスを指します。
- 就寝や起床における介助
- 排泄の介助
- 食事の介助
- 入浴、清拭の介助
- 着替えの介助
- 移動の介助
- 自立生活支援のための見守り
- 特別な配慮がある調理(流動食、糖尿病食、腎臓食など)
- 痰の吸引、経管栄養等の医療的ケア(研修が必要)
- 服薬の介助
生活援助
利用者様が日常生活を送るために必要な、掃除・洗濯・炊事・買い物などの援助を生活援助と呼びます。
利用者様がひとり暮らしであったり、ご家族が傷病を抱えていたりなど、やむをえない事情がある場合に行います
訪問介護でおこなう生活援助には以下のようなサービスが含まれます。
- 掃除
- 洗濯
- 一般的な食事の調理や片付け
- ベッドメイキング
- 買い物
- 薬の受け取り
通院などにおける車両の乗降や受付の介助
利用者様が医療機関や行政機関に通う時に車等を利用しなければならない時があります。
この場合、車両の乗り入れの介助や受付の介助等、各種手続きのサポートをします。
また、ホームヘルパー自身が車を運転することがあるので、自動車免許を持っていると良いでしょう。
介護保険法により制限されている業務について
- 掃除
- 洗濯
- 一般的な食事の調理や片付け
- ベッドメイキング
- 買い物
- 薬の受け取り
行える業務と行えない業務について
種類 | 行える業務 | 行えない業務 |
---|---|---|
掃除 |
|
|
洗濯 |
|
|
調理 |
|
|
買い物 |
|
|
外出 |
|
|
まとめ
介護福祉士を取得するには最低3年の経験が必要で尚且つ実務者研修を修了していることが条件となります。
資格取得の為にあらかじめ勉強をしていれば、無資格で技術が身に付いていない時に比べると、仕事の理解度を高めることに繋がります。
介護支援専門員は介護技術がなくても取得することは可能となりますが、介護経験を積んでいた方が仕事に有利となります。
初任者研修や実務者研修のスキルを職業訓練校で学ぶことが出来れば、それに越したことありません。
しかし、これらは競争率が高くて特に有資格者が受講を希望するとなると狭き門となります。
資格取得を考えているのであれば、スクールの情報を出来るだけ多く手に入れて、自分に合ったスクールを選びましょう。
実務者研修…試験対策講座無料一括資料請求