フードサービスはブラックで何のスキルにもならない。
なんてことが囁かれていますが、スキルの格差はハッキリしていますよ!(この手の業界の経験上)
料理が好きかどうかで成長度合いに違いが現れます。
調理師
調理師とは、調理師の名称を用いて調理の業務に従事することができる者として、都道府県知事の免許を受けた者をいいます。
1958年調理師法の公布により都道府県知事の免許制として法制化されました。
調理師は名称独占資格であり、調理師の資格を持たないものが調理師を名乗ることは出来ませんが、調理師の免許がなくても調理の業務に従事することが可能です。
調理師法では飲食店等は調理師を置くように努めなければならないと規定されています。
調理師の仕事
調理の仕事は調理師の資格がなくても従事出来ますが、調理師という名称を用いて業務に携わる場合、就職時に調理師の資格を持っている方が有利な場合には資格が必要となります。
飲食店を開業するには食品衛生責任者を置くことが決められており、調理師の資格を持っていない場合は講習を受ける必要があります。
飲食店
勤務する料理のジャンルによって呼称が変わりますが、和食であれば「板前」、洋食であれば「シェフ」、寿司であれば「寿司職人」と呼ばれます。
いずれにしろ、一人前になるには現場において厳しい修行を何年も積み重ねていく覚悟が必要です。
特にホテルにおいては現場環境が厳しく、仕事を与えられるには、早朝からの勤務終了後に再び厨房に入ってまで修行しないと、先輩調理師から仕事を与えられないという苦労があります。
元々ハードな上に深刻な人手不足が輪をかけている状態です。体質が古く体育会系の職場も未だにあります。
非常にハードですが、専門的な調理を行うことから、作業の段取りを効率良くこなすスキルや、料理の腕(盛り付け方、技)を磨くには一番ベストといっても良いでしょう。
また、飲食店における食中毒問題も深刻化しており、食中毒を起こしてしまうと営業停止になって利益が下がる上に社会的信用を失わざるを得ません。
お客様が安心して食べていただく為にも、HACCPに基づいた衛生管理を理解し、実践出来ることを求められます。
調理師には正社員として働くか、又は派遣社員として働く選択肢があります。
正社員として働くと社会保障があるものの、勤務時間を拘束されやすいデメリットがあります。
一方、派遣会社に登録し、店舗に派遣しながら働くのであれば、労働時間に関する条件は悪くないものの、社会保障が充実していないデメリットがあります。
中食産業(惣菜業)
共働き世帯で家事、仕事に追われて忙しい人、在宅生活を送っている高齢者にとってお惣菜は有難い存在です。
ここ数年、中食産業の需要は上昇が続いています。
忙しくて食事の準備に手が回らなく、外食よりコストが抑えられたいことからニーズが高まっています。
メニューのバリエーションも次々と増えています。
飲食店同様、調理業務及び衛生管理の理解と実践が欠かせません。
集団給食(病院、福祉施設)
病院や福祉施設等の調理業務に携わります。調理そのものは難しくありませんが、対象者の疾患やアレルギー、嗜好その他コメントに応じる為、細やかな対応が必要です。
事業所によっては摂食嚥下障害の方の為に、温度設定や加熱時間、オペレーションを考慮しながら自ら腕を振るってソフト食の調理したり、凍結含侵法を導入して料理の見た目を変えずに軟らかくする方法を導入して調理に携わります。
病院や施設の献立は栄養士によってカロリー計算されていますが、使用される食品や調味料の使用量通りになかなかいかない場合もあります。
患者様等の対象者の健康状態を害さない範囲で味付けに一工夫したり、料理が軟らかく仕上がるようにひと手間加えたり、色鮮やかに仕上がる調理方法で見た目美味しくする工夫は調理師の腕の見せ所です。
また、患者や高齢者を対象としていることから、大量調理施設衛生管理マニュアルに基づいた衛生管理を徹底しなければなりません。
給食委託会社
病院や福祉施設、学校給食等の集団給食施設は給食業務を委託している所が多いです。
給食委託会社に就職する場合、資格を持っていないとフルタイムで働いてもパートでしか雇ってもらえません。
その為、給食委託会社に就職する場合は資格を持っている方が有利となります。
ただ、給食委託会社のシステム上、調理師は経験が浅いにも関わらず、調理補助の経験なしにして調理業務に入ります。
厨房業務の中で調理をする調理師は、現場の軸として動きます。
また、病院や施設では対象者の疾患、アレルギー、その他コメントに対する細かい対応が求められます。
そして厨房の中心的である以上、周りのスタッフに適切な指示を仰げる位の状況判断力が求められます。
給食委託会社では衛生管理がよりシビアであり、会社独自のマニュアルに沿って衛生管理を行います。
これは対象となる方が患者様や高齢者という抵抗力が弱っている方が殆どということから、飲食店で働くより徹底して衛生管理をすることを求められているからです。
保育園、学校給食
保育園では園児の食事やおやつの調理、学校給食では学童の食事の調理にあたります。
現在ではアレルギーのお子様が多いことから、除去食の調理も多岐に渡ります。
有料老人ホーム、サ高住
ホスピタリティを重要視した施設が多く、ホテルやレストランで提供されるような料理スキルを求められます。
シェフや板前としての経験があるのなら腕を振るえるでしょう。
栄養士や管理栄養士の配置基準が定められていない為、栄養士、管理栄養士を配置しない施設では献立作成や発注に関わる場合があります。
イベントも盛大に行い、フードケータリングショーで行われるようなものを提供するでしょう。
独立開業
店舗を構え、調理や商材調達、衛生管理、清掃の他に労務管理や原価管理等の事務作業、メニュー開発等仕事の幅が増え、場合によっては全てを一人でこなす場合があります。
特に難しいのは原価や売り上げ等の経営に関わる数字管理の部分であり、人件費、食材費、家賃、光熱費、減価償却、その他消耗品等を売上の中からやり繰りしなければなりません。
この資金管理が苦手な調理師は割と多いようです。
フードコーディネーター2級のレストランプロデュース又は簿記検定2級の工業簿記を学んでおくと収支計画を立てやすいでしょう。
また、店舗を設立する時は立地条件や周辺環境を踏まえ、客層を絞り、コンセプトを明確にして、お客様を獲得する為の戦略をしっかり行わないと、淘汰の危機に追い込まれるリスクは高くなります。
ただでさえ、店舗を長年続けることは本当に困難なことです。
店舗を構えると、土地の購入やビルのテナントを借りて営業する形態が主流で多額な投資が必要となりますが、最近ではキッチンカーによる独立開業をして、開業費を抑えながら飲食店を経営している調理師もいます。
店舗を構える時には食品衛生責任者を配置しなければなりませんので、調理師、栄養士、製菓衛生士の保有者又は、無資格者の場合は講習を受けて取得して配置することが必須です。
養成施設
栄養士養成施設校や調理師養成施設校の調理実習の講師として携わります。
調理師資格を取得するには
調理師資格の取得方法は次の二通りです。
(画像をクリックすると、大きな画像が表示されます)
- 各都道府県が指定している調理師学校(養成施設)を卒業する。
- 飲食店などで2年以上の調理の実務経験をもとに、調理師試験に合格する。
調理師学校に通うことなく調理師試験を受験する場合は、対象施設で2年以上実務経験を積み、下記の基準を満たす場合に、実務経験として認められることになります。
- 飲食店における営業(旅館や簡易宿泊所を含む)
- 魚介類販売業(販売のみは、実務経験と認められない)
- そうざい製造業(佃煮を含む煮物や炒め物・焼物・揚げ物・蒸し物・酢の物または和え物を製造する営業)
- 学校や病院、寮等の給食施設(継続して1回20食以上、または1日50食以上調理している施設で働くこと)
試験内容
調理師試験の科目は下記の通りです。全ての科目が合格基準以上の点数を取ることが条件です。合格後、必要書類を添えて都道府県に申請した後、調理師免許が交付されます。
- 栄養学
- 食品学
- 調理理論
- 衛生法規
- 公衆衛生学
- 食品衛生学
専門調理師・調理技能士
専門調理師・調理技能士とは、より高い専門技術・技能と知識を持っている調理師であることを国が認める資格・称号です。
調理師から経験を積んだうえで取得する上位の資格・称号です。
「専門調理師・調理技能士」でひとつの称号です。
管轄する法律の分類上、資格としては2つですが、「調理技術技能評価試験」を受けて合格すると両方同時に得られます。
「専門調理師。調理技能士」を取得すると、次のように活躍の場が増えます。
調理現場での責任者・リーダーの役割
料理長やシェフ、現場責任者など、責任者やリーダーの立場に就ける可能性が高まります。
独立・キャリアアップ
独立して自分の店を持ったりする道もあります。
転職する場合も専門調理師・調理技能士の資格を持っていることは強いアピールになります。
調理師専門学校の教員資格取得
調理技術技能評価試験に合格すると、専門調理師・調理技能士資格と同時に、調理師専門学校の教員資格も取得することができます。
教育
直接に調理の現場に携わるだけでなく、食に関する教育に携わるなど、仕事の幅を広げることができます。
専門調理師・調理技能士の仕事
より専門的な調理を担当
知識・経験・技能に優れた調理師として、より専門的でレベルの高い調理を担当することになります。
若手調理師の育成
優れた先輩として、若手の調理師の教育や育成を行うこともあります。
調理師全体の技能・社会的地位を高める
後輩の調理師の教育をして技能を高めるだけでなく、間接的に調理師全体の社会的地位を高めていく役割を負うことになります。
食育活動
地域の子どもたちなどに食育を行う、教育的な範疇の仕事にも携わります。
日本の食文化の継承・伝達
日本国内に対しても海外に対しても、日本の食文化を継承・伝達していく広報のような役割も負うことがあります。
日本の食生活の改善・向上
高い調理技術や知識経験を生かして、日本に住む人たちの食体験・食生活を改善・向上させていきます。
専門調理師・調理技能士の取得条件
専門調理師・調理技能士になるには、公益社団法人調理技術技能センターが実施する国家試験「調理技術技能評価試験」を受けて合格する必要があります。
受験資格の大前提は、調理師免許を取得していること、かつ調理の実務経験があることです。
受験資格は次の二通りです。
- 実務経験によるもの…実務経験8年以上で、そのうち調理師免許を有していた期間が3年以上
- 調理師養成施設卒業者…実務経験6年以上で、そのうち調理師免許を有していた期間が3年以上
試験内容
調理技術技能評価試験には6つの料理区分があります。区分は以下のとおりです。
- 日本料理専門調理師
- 西洋料理専門調理師
- 麺料理専門調理師
- 中国料理専門調理師
- すし料理専門調理師
- 給食用特殊料理専門調理師
製菓衛生師
製菓衛生師とは、お菓子やパンを作る為の資格です。お菓子の製造や販売業務自体は資格が無くても可能ですが、より専門的な知識や技術を習得する為に資格を取得する人が多いと言われます。
製菓衛生師は名称独占資格の為、資格のない者が製菓衛生師を名乗る事が出来ません。
製菓衛生師の仕事
菓子販売店、ホテル、レストラン
これらの職場の菓子部門である「パティシエ」として製菓を行っています。
「パティシエ」と呼ばれて洋菓子を作っているイメージが強いですが、和菓子の製造や調理にも携わります。
また、店舗によってはお子様のアレルギーに対応した菓子の製造・販売を行っているところ、着色料やトランス型脂肪酸等の有害物質を含まない商品や白砂糖の代わりに甜菜糖を使い、健康志向に拘ったものを開発し、製造・販売を行っているところもあります。>
菓子製造会社
菓子の製造に関わるのはもちろん、製造された商品に「食品添加物」のチェックを行い、有害物質から消費者を守るために役立つ仕事をしています。
資格取得までのルート
製菓衛生師の受験資格は下記の通りです。
- 中学校卒業(又はこれと同等以上)の学力を有する者で、厚生労働大臣の指定する製菓衛生師養成施設において、1年以上製菓衛生師として必要な知識及び技能を修得した者。
- 新制中学校卒業(又はこれと同等以上)の学力を有する者で、菓子製造業の許可を受けた施設で、証明時において2年以上の菓子製造業務に従事していた経験のある者。
- 1及び2以外の者で、製菓衛生師法の施行された昭和41年12月26日において菓子製造業務に従事しており、かつ、3年以上菓子製造業務に従事していた者。
試験内容
製菓衛生師試験の科目は下記の通りです。
- 栄養学
- 食品学
- 衛生法規
- 公衆衛生学
- 食品衛生学
- 製菓理論・実技
全ての科目が6割以上の点数を取ることであり1科目でも基準より点数が低いと不合格になります。
合格後、必要書類を添えて都道府県に申請した後、調理師免許が交付されます。
《試験の免除について》
職業能力開発技能検定において、菓子製造の1級又は2級に合格している者は、申請することで、試験科目のうち「製菓理論及び実技」が免除されます。
パン製造技能士
パン製造技能士とは、パン製造技能士とは、パンづくりの実務経験者を対象として、製パン工程における技能を認定する国家資格です。資格がなくてもパンの製造に従事することが出来ますが、パン製造技能士は名称独占資格の為、資格を持たない者がパン製造技能士を名乗ることは禁止されています。
パン製造技能士の仕事
ホテル、レストラン、パン屋、パン製造大手メーカーなどが就職先となります。
生地の材料の調合から仕込み、成型、発酵、焼成、仕上げ、製品検査を行います。口に入る食品として消費されるものですので、手洗い、服装、健康において、衛生管理を徹底しなければなりません。
味、見た目等商品製造や開発にあたり、センスが求められています。
資格取得までのルート
パン製造技能士は特級、1級、2級に分かれています
2級
受験資格
- 2年以上の実務経験者。
- 専門高校・短大・高専・高校専攻科卒業者の指定学科修了者。
- 厚生労働大臣指定の専修学校・各種学校卒業者で800H以上修了者など。
必要とされる実務経験の年数は職業訓練歴、学歴等により短縮される場合があります。
受験科目
《学科》
- 食品一般
- パン一般
- パン製造法
- 材料
- 関係法規
- 安全衛生など
《実技》
- 支給した強力粉及び中力粉の2種類の小麦粉のうちから強力粉を選び、各材料を秤量し、直捏(じかごね)生地法(ストレート法)によってミキシング、発酵及び焼成を行い、山形(イギリス)食パンを指定の型を用いて3本作る。(標準時間:5時間30分、打切り時間:6時間)
1級
受験資格
- 7年以上の実務経験者。
- 2級合格者で、2年以上の実務経験者。(学歴経験等により細かく指定されていますので、厚生労働省のHPでご確認ください)
受験科目
《学科》
- 食品一般
- パン一般
- パン製造法
- 材料
- 関係法規
- 安全衛生など
《実技》
- 水の配合割合を決定したうえで、各材料の使用量を算出する。さらに、支給した強力粉及び中力粉の2種類の小麦粉のうちから強力粉を選び、各材料の秤量を行った後、直捏(じかごね)生地法(ストレート法)によってミキシング、発酵及び焼成を行い、山形(イギリス)食パンを指定の型を用いて4本作る。(標準時間:5時間30分、打切り時間:6時間)
特級
受験資格
- 1級合格後5年以上の実務経験者。
受験科目
《学科》
- 工程管理
- 作業管理
- 品質管理
- 原価管理
- 安全衛生管理
- 作業指導
- 設備管理
《実技》
- 工程管理
- 作業管理
- 品質管理
- 原価管理
- 安全衛生管理
- 作業指導
- 設備管理
詳しくは中央職業能力開発協会にて確認してみて下さい。
ふぐ調理師
ふぐ調理師とは、ふぐ条例に基づき都道府県知事が行うふぐ調理師試験において免許を取得した者を言います。
ふぐには猛毒が含まれていおり、ふぐの種類によって毒が含まれている部位が異なるので、調理が極めて難しくふぐを取り扱う知識や技術が必要となります。極めて困難な業務であることから、有資格者以外はその業務を行えない業務独占資格と位置付けられています。
ふぐ調理師の資格取得条件
ふぐ調理師の受験資格を持つものは下記の三通りです。
- 東京都知事の免許を受けたふぐ調理師の下で、ふぐの取扱いに2年以上従事した者。
- 府県知事が与えたふぐ処理に関する免許を有する者。
- 県知事又は市長が2年以上ふぐの処理に従事した者を対象として行うふぐ処理に関する講習会を修了し、当該知事又は市長がふぐ処理を行うことを認めた者
受験資格は各都道府県で異なります。年度によっても変更する場合がありますので、受験を希望する場合は各都道府県衛生主管部に問い合わせて下さい。
船舶料理師
船舶料理士は船員の食事の調理や食品管理を行う仕事であり、、船舶料理士免許は船員法に基づく国家資格です。
資格取得までのルート
船舶料理士の受験資格を持つものは下記の二通りです。
- 20歳以上。
- 10年以内に船舶に乗り込み、1年以上調理に従事した経験があり、2名以上の船長から能力を証明された者(当該船長が外国人の場合には、外国人船長に加えて日本人船舶職員からも能力を証明されていること)
調理師試験の科目は下記の通りです。全ての科目が合格基準以上の点数を取ることが条件です。合格後、必要書類を添えて都道府県に申請した後、調理師免許が交付されます。
試験内容
《筆記試験》
- 栄養学
- 食品学
- 調理理論
- 衛生法規
- 公衆衛生学
- 食品衛生学
《実技試験》
- 日本料理
- 西洋料理
- 中華料理
まとめ
フード系の業界は体質が古く、体育会系のノリの職場もまだ残っています。
仕事はキツイし、環境が良くない…だからブラックと言われていますが、ブラックかどうかは人間関係にも大きく左右されます。
病院や施設は比較的拘束時間が短く(給料は安いですが)、人間関係の当たりはずれは事業所それぞれです。