コンサルサントというとプロで権威性があるように聞こえますよね?
医療の世界にも「医療コンサルティング」という医療施設の経営のプロが居ます。
だから経営に関することは全て熟知して、医療機関を繁栄させる力が強く、ホワイトカラーが強い!!ってイメージが強いでしょう。
コンサル会社のお陰で倒産の危機から救われたとなれば、コンサル会社は素晴らしいものです!
信頼出来る病院と信頼出来ない病院
ところで、あなたにとって信頼出来る病院とはどんな病院でしょう?
世の中、最近設立された新しい病院もあれば、長い歴史を持った病院もあります。
歴史が長い病院であれば世代交代を迎えているところもあるではないのでしょうか?
歴史が長いということは、それだけリピーターである患者様からの指示が厚い証拠なのです。
「〇〇病院の院長先生は人柄がいいし、診察してもらうと安心する」
このような思いで病院を信頼して通院を続けてきているでしょう。
また、相談すると恐怖心を煽らず、言葉を交わしてくれる医師も好感があるのではないのでしょうか?
しかし、長く病院を運営していれば、経営者は高齢になり、やがて後継者に後を引き継ぐことになります。
後継者は自分の子供だったり、新たに医師を雇い入れて院長としてのポジションを付いてもらことがあるでしょう。
経営者が変わることは、患者様にとっても不安があるものですが、従業員としても不安があるものです。
いくら院長の子供であっても、価値観や性格は全く以て違いますからね。
一方、次のような病院にはかかりたくありませんよね?
- 恐怖心を煽る
- 通院を強制する
- 長期に渡る薬剤の服用しないと病気が治らないと脅し、薬剤処方の期間が長くなるにつれて、薬剤量が増える
- 受け付けが不愛想
- スタッフが怖い
接遇面が悪いと、他のサービスさえも粗末に感じてしまうもの。
上記のうち、上の3つに該当する場合、当該病院は利益重要視であることが解ります。
そして、これらの項目は潰れる病院の特徴としても言われています。
また、経営が変わることによって診療科目や病棟の運営方式が変わる場合もあるでしょう。
ただ、これがお客様を蔑ろにした運営方式に変わり果ててしまうことも無きにしも非ずです。
後継者の問題
歴史の長い病院の運営を更に続けていくには、世代交代が欠かせません。
私が過去に働いていた病院に就職した当時は、見事なホワイト企業でした。
とは言っても、病院なので給料が突出して高いわけではありませんが、仕事のスタンスはシンプルで、休日は仕事のことで悩むことがなく、安心して休暇が取れるシステムでした。
人間関係が非常に良かったです。
そして自分が休んでいる間の業務は、給食委託会社が代行して行うので、休みの間のことは給食委託会社にお任せ!って状態でした。
当然、職場から電話がかかってくることはありませんでしたよ!
とにかく、院長といい、事務長といい、人格者でしたから!
そのお陰で、勤務中はピリピリした雰囲気がなく、とても安心感がありました。
スタッフも活き活きとして、行き会えば必ず挨拶や「お疲れ様です」の声かけがありました。
当院は地元住民からの信頼が厚く、外来は混んでいたし、病床も殆ど満床でした。
しかし、この病院は、当時の院長の年齢が70歳近く、事務長も定年を迎えたばかりでした。
いずれ、経営者が変わることが危惧される状態。
スタッフの間では、院長の後継者として院長の子供が後を引き継ぐのか?事務長の後継者として相応しいスタッフは、現状ではいないけどどうするつもりなのか?といった声がささやかれていました。
私が当院に就任して数年後、臨時朝礼にて経営者が変わることが発表されました。
これと同時に事務長が年度内に退職する話も挙がったのです。
経営者が変わって運営方針を全く違うものに変えられ、それに伴って望まぬ形で人事異動が行われたら、この病院に居づらくなるという不安もありました。
過去に、この病院の前職である施設で経営者が変わったことを経験したことがあり、以前の運営方針とは全く違うものに摩り替えられ、働きにくい職場に変わり果ててしまったという、とっても苦い経験があったからです。
後継者については、院長も相当悩まされていたかのように思われます。
考え抜いた結果、医療コンサル会社に経営を譲与することを選択したのでしょう。
当時、後任となる事務長からは「この病院のスタッフは人間関係が素晴らしく、挨拶も徹底しているので、今までの方針をこのまま継続していきましょう」という言葉を頂いたのです。
ビフォアーとアフター
一般的には医師には経営能力がないと言われています。
この経験を通じて、感じたことですが。。。
アフター
逆じゃね?と思いますが、アフターの方からの方が話しやすいので、アフターから先に話します。
先程私は、その病院の経営者はコンサル会社に変わったことを話しました。
コンサルティングというと、経営のプロだの、マーケティングの専門性を持っているイメージも強いかと思いますが…
コンサルタントってある意味、誰でも名乗れると思っています。
厨房設備コンサルティングだの、栄養コンサルティングだの名乗って専門知識をひけらかせれば出来ることですから…。
しかし、このコンサル会社が関わったことによってこの病院の評判はたちまち下がってしまったのです。
なので、昔からこの病院に患者として関わっていた人からすると、残念なことなのです。
この頃、患者様自身も高齢化に伴い、免許返上によって車を運転することがなくなったので、該当する患者様の通院する回数も少なくなりました。
そして入院病棟には介護療養型病棟がありました。この介護療養型は、国の方針によって淘汰される方向性です。
国からの減収とともに、外来にかかる患者数が少なくなってしまっては、この病院の経営が傾いてしまうことが危惧されました。
この方針転換は、一見合理的にように思えました。
が、これって、本当にマーケティングを行ったのかというと疑問です???
それじゃあ、どうして医療療養型が芳しくないと考えているのかと思うでしょう?
この病院に通院されている患者様や、病院の近隣住民はこの病院に何を求めているのか?
その声に一切耳を傾けていないのではないか、と思ったのです。
要するに、マーケティングを行わずに経営方針を変えてしまったということです。
この行動は経営コンサルタントとして失格ではないかと…
どうして近隣住民の声に耳を傾けていないかと感じたのか?
これは、直接外来に携わっている院長から「常連客である患者様が高齢化によって免許返上して、通院する回数が減った」との話にヒントが隠れていたからです。
もし、免許返上された患者様の通院回数が減っただけなのなら、足を運ぶ手段が不便になって回数が減っただけであって、通院は続けていれば、まだ、当院を拠り所としています。
一方、この病院に突如通院することがなくなったのであれば、何等かの理由があってその病院を離れていったとも言えます。
もしかしたら、送迎サービスや訪問診療を行ってくれる病院に変更したのかもしれないし、当院に違和感を感じて去っていたのもしれません。
外来受診される者様達の身体状況と言えば、身体に多少不自由があるものの、自立した日常生活を送ることが可能な状態です。
その患者様達は、診察を受けて安心する、リハビリテーションによって身体機能の維持を図ることを目的とする、このような理由で、その病院を拠り所として通院していました。
この状況で病院を発展させる為に何をするかというと、
病院の収益を上げる為に、寝たきり王国の医療療養型病院にする。
という返答を聞いて、皆さんはどう思いますか?
何やってんねん?ってなりますよね。
少し前まで車の運転が出来ていたと言えば、まだまだ在宅で自立した生活が送れるレベルの身体状況、つまり予防が相応しいということです。
日常生活動作が介護予防というレベルであれば、次のサービスを導入する方法があるのではないのでしょうか?
- 送迎サービスを導入する
- 訪問看護や訪問リハビリテーションを導入する
- 介護療養型病床を老健に変換する…
様々な意見が挙がると思います。
しかも当院は、デイケアセンターも併設します。
だったら、もっと予防医療に力を入れておけば良いのに、と私は思っていたのです。
本来なら在宅介護支援センターも作るはずだったのに、その話も放置されています。
ところが、力を入れているところは、「特に重傷者を受け容れる医療療養型」のことばかり。
地域住民の意向や予防には一切着目していなかったのです。
医療療養型を重度な患者で満床にしておけば、病院の利益も安定するからなのです。
そして、予防に力を入れてしまえば、医療療養型の利益に響くので、予防に関してはスルーしていたのでしょう。
実際、医療療養型の利用を希望している患者の傾向には…
- 遠方から来られる方
- 他の療養型病院で面倒が見切れなくなって受け入れを依頼する
このようなケースが多いのです。
中にはクセの強い患者が入院して、現場が泣かされることもあります。
次第に入院患者の傾向は、医療療養型病床以外の病棟でさえも医療療養の対象となり、
他所の病棟でも入院が長期に渡った場合は、医療療養型で算定するように、収入を何とか上げていました。
しかし、外来からの入院は本当に乏しいという状態でしたね。
このような運営方針から、昔から当院を知っている人からは、何だか昔と違って年寄り病院になってしまったねという口コミがあります。
…というか、実際、昔から利用されている患者様から、そう言われたのです。
ある意味、地域住民にとって、この病院への敷居が高くなってしまった…という結果を招いてしまったのですね。
この病院がこのような運営方針である以上、従業員として働くにはこの方針に従うか、反発するのならその場を去るしかないってことなんです。
それは、患者にとっても然り。
なので、経営者が変わって以来、患者の気持ちはどうでもいいから、診療報酬による利益を重視して、病院を維持しているという方法で運営していることとなるのです。
ビフォアー
それではビフォアーはどうなのかというと、病院の売上が良かった、というのが本当のところです。
そのころは、介護療養型の報酬が下がる前だったので、この件については割愛します。
介護療養型の診療報酬が減少した当時、老健に変換した方がいいんじゃないのか?というのが院長のご意見であり、私も寧ろその方が良かったと考えていました。
私が入職した当初の外来の状況は、院長の出勤日だけではなく、院長がお休みの日も混んでいました。
やがて、当時働いていた常勤医師が退職してします。
それ以降は院長が出勤されているかどうかで、外来にかかる患者数が全然違っていたのです。
それだけ、過去の当院は、患者様からの信頼が厚いと言えるのです。
何故なら、かつての当院の方針は、医療技術を提供するだけではなく、心のケアも提供していました。
それは心療的というよりは、信頼関係を築くというものなんですね。
- 患者さんに恐怖心を煽る
- 通院を強制する
- 無暗矢鱈に薬剤を処方する
当然ながら、このようなことはありませんでした。
かつては、この病院は患者様を第一にという方針で経営していました。
勿論、食事においても然りですが、栄養部門で言えば職員の食事は、二の次で、とにかく患者様ファースト。
患者様の治療方針に合わせた中で、患者様がいかに満足していただける食事を提供することを第一に仕事に取り組んで下さいというのが、この病院の栄養部門の方針だったのです。
かと言って、職員を完全にないがしろにしていたわけでもないのです。
患者様を大切にしつつ、職場の人間関係も大事にするというのが、以前のこの病院の方針でした。
それは職員を甘やかせるというものではありません。
人間関係を円滑にさせ、福利厚生を充実させてモチベーションを高めることによって、より良い医療の提供に繋げるというものです。
人は心に余裕があれば人は笑顔で接することが出来ます。
病院の人間関係が優れていたり、働くスタッフの人間性が優れているのであれば、その場にいると安心しますよね。
それで、尚且つ誠実に医療を提供するとなれば、この病院なら安心出来るという気持ちが沸いてきます。
そこで患者様が求めていたものは、スパゲティー症候群になることではなくて、自身の症状を緩和するとともに、心を支えてもらうことだったのではないかと考えられます。
そして、トップに立つ人の人格が優れていれば当然働きやすくなり、周りで働く人達も自然と優しくなります。
実は、以前常勤で働いていた医師が退職したタイミングというのが、経営者が変わる少し前でした。
事務所や医局では、経営が変わるという噂がチラホラ流れていたそうです。
当時の常勤医師達は、勤続年数が長く、10年や15年続けていました。
もしかしたら、経営者が変わることによって当院に何か危機感を感じて、退職という選択をしたのではないかと、憶測しています。
ただ、あくまでも私の憶測なので、真実は本人のみぞ知るということです。
マーケティングが行われているのはどちらか?
この話をまとめると、院長主体であるビフォアーはマーケティングが行われている上での運営、コンサル会社経営のアフターはマーケティングを無視した運営ということになります。
この裏事情に付いて、深くは話を出来ませんが、この病院をよく知る近隣住民は第三者であって、この近隣住民から
- この病院、最近おかしいよね?
- 前は電話一本で、救急車が来てくれたのに
実際にこんな声もあるのです。
これとは対照的に以前のクチコミには、次のような賞賛の声がありました。
- 前の院長や事務長が中心になっていたころは、病院の雰囲気が良く、温和だった
- 先生の人柄が良いからこの病院を選んでいる
- 当院が設立された時は、院長が働いていた病院の師長が退職をしてまでも当院に就職を希望していた
やらせではないのか?と思うかもしれませんが、この病院は歴史が古いのです。
もし、これが外面だけなのであれば、何等かの形でボロが出ていたはずなのです。
実際にボロはなかったですし、悪事の隠蔽も一切ありませんでした。
それは現場にいた人間である私からも言えることです。
元はといえば、当院は職員の定着も良く、20年以上勤続出来たスタッフも多く、決してそのスタッフは、ハラスメントをするようなスタッフ達ではありませんでした。
まとめ
マーケティングというと、経営学を専門的に学んでいる者の領域に思われがちですが、マーケティングに不向きなタイプは…
- 自分を中心に世の中が回っている
- 人の手柄は俺のもの
- ゼニゲバ
経営する上で国からの収益は無視できないことかと思います。
ただ、それだけにとらわれてお客様のニーズを無視すれば、お客様に「ここは自分が求めている場所ではない…」と判断され、クライアントに去られてしまうでしょう。
経営が危うい病院は、この事例に限ったことではありませんが。
コンサルというのも、ピンキリなのでしょう。
この病院が、地域住民の意向を無視した金儲け主義の病院に変わり果ててしまったことは、とても残念に思います。
当院に限りませんが、ベルトコンベア式の医療と言い、機械的でビジネス的になった医療には、思い遣りのかけらもありません。
病気を治すのは医師ではなく、病気にかかった本人が乗り越えるものであることが浸透されるにつれて、病院離れをする人も増えていくのでしょう。