「私は病院で管理栄養士をやっています」
「私は管理栄養士の資格を持っています」
初対面の人に管理栄養士であることを明かすと相手が固まってしまったという経験はありませんか?
別に威嚇したつもりもないし、もっと気楽に接して下さいよ!と思いますよね。
今まで栄養指導を行ってきた栄養士のやり方が悪いからこうなってしまったと責めても何も始まりません。
現在「栄養指導」という言い回しをやめて「栄養相談」と呼び方を変えています。
「栄養指導」というと上から強引に命令を下されるイメージを持ってしまい、患者様が栄養指導を受けることを躊躇してしまう為、栄養指導という呼び方をしない医療機関が増えています。
一方「相談」と言われると、「自分の悩みを聞いてくれる」「分からないことを応えてくれる」という軟らかい印象を受けます。
しかしながら、栄養士、管理栄養士はコミュニケーションが下手とよく言われます。
栄養指導は押し付けがましい
栄養士や管理栄養素を養成するのに「栄養指導論」や「栄養指導実習」があります。
特定保健指導が導入されてから、栄養士や管理栄養士のコミュニケーション技法について研修会で学ぶ機会が出来たものの、特に自分のような古参者は栄養士養成課程に於いて接遇やコミュニケーションについて学ぶ機会がありませんでした。
強いて言うなら「栄養指導実習」でロールプレイングを行った程度です。
「学生時代に栄養指導の実習をやらなかったの?」と思われるかもしれませんが、実際校外実習にて病院の実習時に実習先の病院の入院患者に栄養指導を行った程度です。
その栄養指導の実習に同行したのが入職1年目の新人栄養士であり、ぶっつけ本番での栄養指導でした。
社会人となり病院栄養士として就任するようになり、給食管理や献立作成をこなしていく中、栄養士業務としてネックとなるのは栄養指導です。(栄養指導は管理栄養士によって実施されないと報酬が得られませんが)
指導するには話をどのように順序立てれれば良いのか、ポイントをどのように伝えればよいのかを知りたくて、先輩職員の指導を見学したこともありました。
その先輩栄養士は複数の事業所で豊富な経験を積み重ねている人であり、栄養指導に必要な資料も沢山いただきました。その資料を頭の中で整理してどのように順序立てて指導していくのかを考えていました。
やがて、私は管理栄養士を取得し、本格的に管理栄養士としてのスタートを切ることとなり、着々と栄養指導の実績を積み上げてきました。
その当時は「反面教師の事例」を知っていたので、相手を否定するような指導をしないようには気を付けていました。
とは言うものの、この当時は特定保健指導が導入されていない時代であり、コミュニケーション方法は至ってオリジナルだったのです。
「栄養指導が終わった!一安心。。。」と思いつつも、無意識のうちに押しつけがましい指導をしていたのかもしれませんし、コミュニケーションを円滑ための言葉も不足していました。
当時の栄養指導は、管理栄養士視点では「患者様に役立つ情報を提供した」という一方、患者様視点では「知識をひけらかされた挙句、態度が押しつけがましかった」という双方の行き違いも多かったのです。
あれもダメダメ、これもダメダメ、JKをヘコませた事例
やってはイケナイ事例を紹介します。
これはかつての自分の上司が行った栄養指導であり、クローン病に罹った高校生に一方的な指導をしたものです。
こうして栄養指導が終わりました。
この時、高校生である患者様の顔の表情はとても暗く落ち込んでいました。
この管理栄養士の声は大きくてキンキン声だったので、言い方もきつく更に精神的にダメージを与えたのでしょう。
極端な押しつけがましい事例ですが、この当時の栄養指導でさえも「患者様の食へのモチベーションを下げずに治療食を自宅で継続出来るように支援する指導技術」は要求されていました。
悪い事例は様々です。
中には管理栄養士という上級資格を持つことによって変にプライドが高くなり「上から目線」となっている人もいます。
そして、指導時には「~して下さい」と命令形で言ってくる人もいます。
これはごく一部だと思いますが「上から目線」「命令形」というスタンスが「栄養指導を受けたくない」理由となっています。
もしかしたら「管理栄養士」であることを明かした時に相手が青ざめてしまうのは「管理栄養士は(食の)強引なコマンダー」というプログラムが盛り込まれているからなのかもしれません。
クライアントとの溝を埋めるには?
- 患者様に必要な情報提供をしている。
- 相手を傷付けないように言葉遣いに配慮している。
- 厳しい食事制限であっても、可能な限り患者様の希望に添える食事提供の為の助言をしている。
- 笑顔を意識している。
- 上から目線にならないように謙虚さを意識している。
- 命令形は使わない。
- 平らな立場で接している。
栄養指導を行う際に、上記のような事に配慮されているかと思います。
実を言うと「栄養指導を受けて下さい」と言われた方の心境は決して快くないものです。
健康診断で引っかかると気持ちが落ち込む上に、栄養指導で管理栄養士に食事のことで怒られてしまったらどうしようと患者様は不安や恐怖の気持ちを煽られます。
栄養指導や特定保健指導に臨む患者様は結構な恐怖心を持っているのです。
その恐怖心を緩和してあげることもこれからの管理栄養士が持つべきコミュニケーション技法です。
これには次のものが挙げられます。
- はじめに「お待ちしておりました」との声をかける。
- 患者様の悩みをヒアリングする。
- 栄養指導前に食事記録を行っている場合は「患者様が食生活を改善しようと努力している」部分に着目し、労いの言葉をかける。
- ライフスタイルを尊重したアドバイスをする。
- 最後に「また、お待ちしております」との声かけをする。
- 患者様の話に共感の態度を示す。(話を聞きながら頷く等)
これを実践することで患者様は栄養指導は特定保健指導を受ける前の緊張感からだいぶ解き放たれます。
実際、研修会にて特定保健指導のロールプレイングを行った時に「お待ちしておりました」との言葉を使ってみました。
この「お待ちしておりました」は相手からするととても安心感を与えられるのです。
今後、相談の場に出られる時は上記の件を踏まえるだけでも、患者様の信頼度アップに繋げられます。
コミュニケーションは言葉だけではない
コミュニケーションとは社交的、非社交的を指標するだけのものではありません。実は接遇全般に関わってきます。
接遇とは挨拶や言葉遣いに着目されがちですが、顔の表情や身だしなみもその一つとなっています。
実は学会に参加すると、栄養士(殆ど管理栄養士だと思いますが)は一目で分かってしまいます。
…というのは服装が野暮ったいからです。
学会の場には沢山の医療従事者が参加します。医師、薬剤師、看護師、理学療法士、臨床検査技師等様々ですが、その中で多くを占めているのは看護師ではないのでしょうか。
栄養士は低収入であることから、学会参加者の大半を占める看護師より明らかに安っぽい服を着ています。
これだけでも明らかに分かることです。
看護師が色合いの鮮やかなブランド商品を身に纏ってる一方、栄養士の身に付けている色は褐色系が多いのです。
それなので、安っぽくて地味な色の服を着ている人が栄養士であることが一目で分かってしまいます。
とは言っても、低収入な栄養士に奮発してでもブランド物を身に纏えと言っているわけではありません。
ただ、服の色で印象を変えることは可能です。
トップスももボトムスも褐色系では暗い印象を与えがちです。(かといってネオンカラーは奇抜過ぎますが)
例えば上着(ジャケット等)を明るめの色や淡い色にするだけでも服装の印象が変わります。
メイクもすっぴんということはないかと思いますが、清潔感、爽やかさを出すことによって印象が変わります。(当サイトではメイクの指導についてはプロではないので割愛させていただきますが、不安な場合はメイクの勉強会に参加してみると良いでしょう)
この身だしなみを変えるだけでも、その人の印象が大きく変わります。実はビフォアー&アフターの画像を見たことがあり、同じ人物でもビフォアーでは「苦労の挙句くたびれた印象」だったのが、アフターでは「清楚な印象」に変化していました。
まとめ
地味、苦労している、コミュニケーション能力が弱いというイメージの強い栄養士ですが、自分が盲点となっていたところを改善するだけでも、自身の…そして管理栄養士としてのイメージアップを図れるではないのでしょうか。
仕事柄、苦労が顔ににじみ出やすいですが、声掛けの一つで相手に与える印象は大夫変わりますよ。