管理栄養士に調理スキルが必要かどうか、人によって意見が別れます。
「管理栄養士の仕事領域は栄養管理だから、フードサービスは委託会社の栄養士に任せればいい」
「管理栄養士が調理の仕事を覚えろ?ふざけるな~!」
管理栄養士によっては「厨房業務は経験した方が良い」という人もいます。
でも、どっちが本当か迷うますよね?
結論を言えば…
結論を言っちゃえば、管理栄養士は厨房経験を積んだ方がメリットが多いです。
- 厨房現場のオペレーションを考慮しながらメニュー作成作業が行える
- 厨房スタッフの苦労を知る
- 献立作成(特に治療食)の経験によって臨機応変に対応が出来居る
- 調理のスキルが身に付く
- 転職に有利
調理のスキル、要らなくね?という人もいますが、これらの理由について話しますね。
厨房現場のオペレーションを考慮しながらメニュー作成作業が行える
最初に、「厨房現場のオペレーションを考慮しながらメニュー作成作業が行える」を挙げました。
若い管理栄養士がよく悩むことですが、自分が新人で委託会社の調理師がベテランというシチュエーションにおいて、よくあることです。
…というか、厨房経験のない管理栄養士の献立は調理師からすると「この人、調理経験ないな」とバレバレなのです。
しかし、若手管理栄養士からすると、せっかく作成した献立が調理師からクソミソのボロカスに言われ挙句の果てに…
というレッテルを貼られてしまうのです。
何故なら、作業工程を掴んだ上での献立作成スキルが身に付かないまま献立作成業務にあたっているのです。
調理現場が激務なのは至るところで騒がれていますよね?
特に調理現場の中でも軸となる調理師の仕事は激務中の激務!
作業段取りの良くない献立を立てられたら、大半の調理師は怒りますよ!
厨房全体の作業工程を掴むということは、厨房の仕事が一人前だから出来ることであって、未経験であれば当然オペレーションがどのように組まれているかなんて知る由もありません。
基礎から学ぶところを、いきなり応用から始めている状態です。
でも、給食委託会社のスタッフは会社が違えど仕事のパートナーです。
思うようにいかなくてイライラすることもありますが、その間を取り持つのも管理栄養士の役目。
そこには厨房スキルがものを言います。
厨房業務の流れを知った上での献立作成は、現場の円滑な流れをつくることに繋がるのです。
厨房スタッフの苦労を知る
管理栄養士も苦労が絶えない職種です。
しかし、厨房で働いている側からすると、エアコンが効いた部屋で事務作業をする姿は羨ましいばかりのものです。
こんな本音を持っている現場スタッフも多いのではないのでしょうか?
確かに管理栄養士の給料はお世辞にも良いとは言えません。
でも、早番や遅番といった交代勤務はありません。
しかし、厨房スタッフからするとシフトは交代制だし、特に調理師は毎日早番を組んで出勤します。
交代制勤務というだけでも身体はストレスとなり疲れやすくなります。
おまけに肉体労働なので、業務終了後の疲れはハンパありません。
厨房スタッフが委託会社であれば、勤務シフト作成に関わらないですが…
直営で厨房を運営している事業所に厨房未経験の管理栄養士が責任者として採用されると、厨房スタッフの苦労を考えずにシフトを組んでしまうことも無きにしも非ずです。
普段、日勤勤務が当たり前であるならば、5日連勤は当たり前と思われますが…
現場で働いているスタッフからすると5連勤はツライものです。
しかも、休み明けが早番、休み前が遅番というシフトを組まれると、厨房スタッフからしたらたまったものではありません。
特に休みの次の日の早番のシフトが組まれていると、休みの日に朝寝坊しないようにピリピリしているので休んでいる気がしません。
そうではなくても、休みの日だって用足しがあるから暇じゃないのよ。
これは厨房スタッフにとって、疲れは取れないしストレスとなります。
しかも、疲労困憊な状態で仕事をすると集中力を失い、ミスを誘発しやすくなります。
食事オーダーミスは患者様や利用者様の身体に与える影響はそれほど大きくないので軽く受け留められることもすくなくありません。
検査に関わる食事オーダーを誤ると、検査時に組んでいたスケジュールが大きく狂わされるという点において、食事オーダーミスは決して軽視出来るものではないのです。
でも、現場業務を経験しているのであれば、厨房スタッフがしっかり休暇を取りたい気持ちを良く知っている筈。
やるべきことはしっかりやってもらう。
休みはしっかり取ってモチベーションに繋げる。
働く従業員が心身健全に働けるようにサポートする。
飴と鞭を上手く使い分けることです。
献立作成(特に治療食)の経験によって臨機応変に対応が出来居る
献立作成、特に治療食の作成を行っていると、食種によっては栄養成分の制限があります。
肝臓食や貧血食、腎臓食はミネラル摂取量も関わります。
そうではなくても献立作成には行き詰まりが付き物。
でも、「出来ません」といって尻尾を巻くわけにもいかないのですね。
先輩が居れば相談することが出来ますが、一人でやっているとどうしても自分の力で乗り越えなければならないことに遭遇します。
言葉で説明すると難しいのですが、窮地に迫った状況を乗り越えてきた経験が、いつの間にか学びになっていることがあります。
この積み重ねが素早い判断力に結びつくのです。
これが出来るか出来ないかで、マネジメント力に大きく左右されます。
また、献立作成をコツコツ積み上げていくと、食品の知識も次第に身に付きます。
栄養指導業務はこれらフードサービス業を知らないと、患者様に有益な情報を提供する知識の幅も狭まります。
栄養指導を受ける患者様は何故、栄養指導のオーダーを受けるのかというと…
「食生活を改善するため」
ということが根底にあるからです。
つまり、食の知識があってこそ栄養指導業務が成り立つのです。
調理のスキルが身に付く
ここが一番意見が別れるところです。
世間は栄養士や管理栄養士を持っていると料理が出来る専門家として見ています。
でも、資格を取ったからといって実際栄養士や管理栄養士として従事していない人も多くいます。
ただ、病院や施設に勤務する場合は厨房業務が出来る管理栄養士の方が周囲から尊敬されやすくなります。
事業所の専属管理栄養士として従事すると厨房に入る機会が殆どありませんが、動きを見れば厨房業務が出来る人か出来ない人か、すぐ分かってしまうものです。
調理スキルがある管理栄養士は、調理師から信頼を寄せられやすくなります。
…というか、調理師が気を遣う位ですよ。
調理師をはじめ、委託会社のスタッフも一人の人間なので意見のすれ違いが生じるのは当然なことです。
事業所と委託会社というそれぞれのルールの間をとることにジレンマがあるかとは思います。
ある程度委託会社の意向を尊重することによって、委託会社との連携が円滑になりやすくなります。
管理栄養士の持つ調理スキルは委託会社との信頼関係の基盤となりますし、調理業務を知っていれば現場オペレーションを考慮した献立作成だって出来る筈。
また、施設で勤務するとフロアーのイベントで簡単な調理をすることがあります。
この時に管理栄養士が調理に携わると、介護スタッフの業務負担軽減にも繋がります。
そして、栄養士や管理栄養士は料理が出来る人としての期待感が大きいのです。
「私、料理出来ません…」
そんな事を言ったら、
「この人、仕事出来ない人なんだなぁ」
と思われ、周囲を愕然とさせてしまいます。
転職に有利
これは私のちょっとした体験ですが、ある新規事業所の面接を受けた時に面接官から受けた言葉でした。
「うちの事業所では管理栄養士の資格を持っているケアマネが欲しかったし、調理が出来る人は重宝する」
その事業所は小規模多機能型施設をオープンする予定で、当系列の施設では基本的に管理栄養士を配置しないことになっています。
その職場はめでたく内定と言う運びとなりました。
何故なら、「調理経験がある」ことが買われたからなのです。
管理栄養士が転職するのに調理スキルはそれほど必要ないかと思われますが、あった方が転職活動が有利です。
まとめ
管理栄養士が調理スキルを持った方が得だというこをこれまで話してきました。
厨房スキルに限ったことではありませんが、現場の経験は積まない人より積んだ人の方が強いです。
叩き上げによって経験を積み上げてきた人は、下積み経験とその苦労があるが故に現場の苦労を加味した上でマネジメントを行うので、部下からの信頼も厚くなりやすいのです。